「技能」ビザとは、外国人が就労に伴い日本に中長期滞在するための在留資格のひとつです。技能ビザにより認められる在留期間は、3カ月、1年、3年、5年のいずれかであり、通算年数の制限なく更新ができ、家族の帯同も可能です。毎年およそ2万人が技能ビザの許可を受けています。
技能ビザに該当する職業
技能ビザは、外国由来の特別な技術が必要な分野や日本国内に技術者が少ない分野など、「特殊な産業分野」とされる一部の職業に限って取得することができます。また一定の実務経験に基づいて習得した技能が必要となる職業であることから、必要な実務要件も定められています。どのような職業がこの「特殊な産業分野」に該当するかは、法律により以下の9つの職業が定められています。
1.料理の調理又は食品の製造
中国料理、フランス料理、インド料理をはじめとするエスニック料理等の調理師の他、点心、パン、デザート当の食品を製造する調理師やパティシエ等がこれに該当します。
実務要件:10年以上の実務経験(料理等の科目を専攻していた期間を含む)
*タイ人調理師については、日タイEPAにより実務経験年数が5年に短縮されます。
2.外国に特有の建築又は土木
ゴシック様式、ロマネスク様式、バロック様式、又は中国式、韓国式など、日本国内にはない建築・土木の方式に関する技能を有するスーパーバイザー、フレーマー(構造部の組み立てを担う大工)、ドライウォーラー(ドライウォール方式の内壁塗装を担う技術者)、フィニッシュ・カーペンター(施工後の装飾を担う技術者)等がこれに該当します。なお枠組み壁工法の技術者については、技術移転を目的とする場合等、一定の要件を満たした場合、このビザの認定を受けることができます。
実務要件:10年以上の実務経験(建築等の科目を専攻していた期間を含む)
3.外国に特有の製品の製造又は修理
ヨーロッパ特有のガラス製品、ペルシア絨毯など日本国内にない製品の製造や修理を担う技術者がこれに該当します。なおシューフィッター(生物学的分野から靴を研究し、治療目的の靴を製造する技術者)については、解剖学や外科学等の知識を用いて外反母趾等の疾病の予防矯正効果のある靴のデザインを考案し制作する工程に従事する者も含まれます。
実務要件:10年以上の実務経験(その製品の製造等の科目を専攻していた期間を含む)
4.宝石・貴金属・毛皮等の加工
宝石や毛皮を用いて宝飾品等の製造をする彫刻師や細工師をはじめとする技術者の他、原石をカット・研磨して宝石に加工するカッターや研磨師、動物から毛皮を制作する工程に従事する技術者等がこれに該当します。
実務要件:10年以上の実務経験(宝飾品加工等の科目を専攻していた期間を含む)
5.動物の調教
動物の調教師等がこれに該当します。
実務要件:10年以上の実務経験(調教等の科目を専攻していた期間を含む)
6.石油の探査・地熱の調査
石油探査のための海底掘削、地熱開発のための堀削、又は海底鉱物探査のための海底地質調査に従事する技術者等がこれに該当します。なお地熱開発のための掘削とは、生産井(地熱発電に使用する蒸気を誘導するために掘削された井戸)および還元井(発電に使用した蒸気及びねっしを地下に戻すために掘削された井戸)を掘削する作業を指すとされています。
実務要件:10年以上の実務経験(石油探査等の科目を専攻していた期間を含む)
7.航空機操縦士
航空法に定める航空運送事業に用いる航空機のパイロットがこれに該当します。
実務要件:飛行経歴が250時間以上であること
8.スポーツ指導者
スキー、サッカー、野球その他、スポーツの指導を行う者がこれに該当します。該当者はアマチュアスポーツの指導員に限られませんが、プロスポーツの監督やコーチ等で選手と一体としてチームで活動する場合は、「興行」の在留資格の認定を受ける必要があります。
実務要件:以下のいずれかに該当すること
スポーツの指導に関する3年以上の実務経験(スポーツの指導等の科目を専攻していた期間およびプロスポーツの競技団体等にプロスポーツ選手として所属していた期間を含む)
国際スキー教師連盟(ISIA)が発行するISIAカードの交付を受けた場合
スポーツ選手としてオリンピック大会、世界選手権大会等の出場経験がある場合
9.ワイン鑑定
ぶどう酒の鑑定等を行うソムリエなどがこれに該当します。ぶどう酒の品質の鑑定、評価およびぶどう酒の保管やその提供に関する技能をいずれも保持している必要がありますが、そのソムリエが実際に行う業務は、これらのうちのいずれかに該当する業務内容であれば問題ありません。
実務要件:以下のいずれかに該当すること
国際ソムリエコンクールで入賞以上の優秀な成績を収めた者
国際ソムリエコンクールにいずれかの国の唯一の代表として出場した者
現在、このビザの認定を受けることができる国際ソムリエコンクールとしては、世界最優秀ソムリエコンクールの他、フランス若手ソムリエコンクールが指定されています。
在留資格が取得できない例
審査に落ちてしまうケースとしては、たとえば以下のような場合が考えられます。
日本人の社員と給与額に格差がある場合
この資格を取得する上では、その外国人の報酬が「日本人が従事する場合と同等額以上の報酬」でなければなりません。そのため同部署の日本人社員は年俸500万円であるのにその外国人は年俸300万円であるというような場合は資格が取得できません。なお必ずしも正社員でなくとも、業務委託等でも資格の取得は可能ですが、その場合も日本人の受託者と同額以上の報酬である必要があります。
過去に無許可で資格外活動をしたことなどがある場合
資格取得の要件として「素行が善良であること」という要件が定められており、たとえば留学の在留資格であるのに1週28時間を超えてアルバイトをしていたというような場合には、審査にあたってマイナスの要素として加味されます。また在留資格の更新を期限までに行わなかったことがある場合にも、同様に審査に通りにくくなる要因となります。
審査に必要な期間
申請から許可までに必要な審査期間としては、更新の場合、40日程度、新規に取得する場合は90日程度、別の資格からの変更の場合には、50日程度が見込まれます。他の在留資格に比べて審査機関が長期化しやすい傾向があり、余裕をもって申請をすることが必要です。
取得までの流れ
技能ビザでの在留資格の許可を受ける場合、以下のような流れとなります。
外国人が海外にいる場合
受入企業が直接または行政書士に依頼して、出入国在留管理庁に申請を行う
出入国在留管理庁での審査(標準的な期間:2週間~一か月)
審査に合格の場合、在留資格認定証明書の交付
交付された認定証明書を外国人に送付する
外国人が本国の日本大使館、日本領事館等でVISAの発給を受ける
日本に上陸後、空港等で在留カードの交付を受ける
外国人が他の在留資格ですでに日本国内にいる場合
受入企業又は本人が直接または行政書士に依頼して、出入国在留管理庁に申請を行う
出入国在留管理庁での審査(標準的な期間:2週間~一か月)
審査に合格の場合、出入国在留管理庁で新しい在留カードの交付を受ける
変更や更新の場合、以前の在留資格が満了する日の3カ月前から申請することができ、審査が長期化した場合は、以前の在留資格が満了した日から2か月間は特例期間として以前の在留資格で滞在することができます。ただしこの期間を超えてしまった場合は、審査中でも一時帰国しなければならなくなりますので、変更や更新の申請は余裕をもって行うようにしましょう。