「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザとは、外国人が就労に伴い日本に中長期滞在するための在留資格のひとつです。この資格により認められる在留期間は、3カ月、1年、3年、5年のいずれかであり、通算年数の制限なく更新ができ、家族の帯同も可能です。毎年およそ17万人がこの資格の許可を受けています。
技術・人文知識・国際業務に該当する職業
技術・人文知識・国際業務は、日本国内での職業を条件として在留が認められる就労ビザのひとつであり、この資格を取得するためには、一定の職業に就労している必要があります。その名の通り、「自然科学の知識や技術」を必要とする職業、「人文科学の知識」を必要とする職業、または「外国に特有な文化に根差す考え方や感受性」を必要とする職業でなければなりません。
この資格を取得できる職業は、たとえば以下のような職業です。
技術 エンジニア、プログラマー、コンサルタント、研究職、各種技術者など
人文知識 語学講師、通訳、学芸員、法務、総務、人事、会計など
国際業務 服飾デザイナー、海外営業、グローバルマーケティング、国際協力など
現場での単純労働や、事務職であってもマニュアル業務のように、特別な知識や経験を必要としない業務の場合には、この資格を取得することはできないため注意が必要です。
技術・人文知識・国際業務に必要な学歴・職歴
技術・人文知識・国際業務ビザの許可を受ける上では、その職務を遂行することができる学術的な素養を有していることを証明するため、一定水準以上の学歴または職歴を有している必要があります。以下のように、申請人が有している学歴・職歴の種類により、認められる職務の内容や実務経験の要否などが変わります。
大学を卒業している場合
母国か日本の大学・大学院を卒業している場合は、大学教育の場が幅広い教養を身に着ける場であることを踏まえて、専攻科目と職務との関連性について、緩やかな基準により認められます。所属している学部・学科のみならず、在学中に履修した科目の内容等も加味されます。実務経験は不要です。なお母国語の語学の指導をする場合は、専攻していた学部等は問われません。
日本国内の大学・短大・専門学校等を卒業している場合(特定活動第46号)
技術・人文知識・国際業務に該当する職業でない職種に就労する場合や、もともとの学歴との関連性がない職業に就職するという場合には、技術・人文知識・国際業務のビザの認定を受けることはできません。ただし日本国内の大学、専門学校等を卒業している場合については、「特定活動(46号)」という別の在留資格の認定を受ける余地があります。この場合、日本語能力試験におけるN1レベルの日本語能力を有していることを試験により証明していることと、給与額が日本人と同等以上の報酬であることが要件となります。
専門学校、専修学校を卒業している場合
日本国内の専門学校を卒業している場合、大学と同様に幅広い知識を身に着ける場であることから、専攻科目と職務との関連性について、緩やかな基準により認められます。これに対して専修学校を卒業している場合は、実践的な知識・技術を身に着ける場であることから、職務との密接な関連性が必要です。実務経験は不要です。
ファッションデザイン校を卒業している場合
特定のファッションデザイン校を卒業している場合、実務経験不要でビザの申請要件を満たすことができます。対象となる教育機関は、エスモード・ジャポン東京校、エスモード・ジャポン京都校、バンタンデザイン研究所、総合学園ヒューマンアカデミー東京校が指定されており、これらの教育機関のファッションデザイン学科等の指定の学科・コースを卒業している卒業生は、服飾デザイナー等への就職に当たり、技術・人文知識・国際業務ビザの対象となります。
指定されている学科・コースの一覧は、下記から確認できます。
情報系(IT系)の資格試験に合格している場合
情報系(IT系)の資格試験に合格している場合で、情報系の職種に就職する場合も、実務経験は不要となります。基本情報技術者試験、応用情報技術者試験、ITストラテジスト試験等が指定されている他、中国、フィリピン、ベトナム、タイ、ミャンマー、台湾、マレーシア、モンゴル、バングラデシュ、シンガポールにおけるこれらに相当する試験も指定されています。
指定されている試験の一覧は、下記から確認できます。
3年以上の実務経験を有する場合(国際業務)
国際業務については、大学や専門学校等を卒業していない場合においては、3年の実務経験により技術・人文知識・国際業務ビザの許可を受けることができます。ただし対象となる国際業務は、以下のいずれかに該当するものに限られます。実務経験年数には、これらに関連する科目を専攻した期間も通算されます。
翻訳、通訳、語学の指導
広報、宣伝
海外取引業務
服飾、室内装飾
商品開発
10年以上の実務経験を有する場合
上記のいずれにも該当しない場合には、その職業と関連する職務に10年以上従事していることが必要です。ただし実務経験年数には、これらに関連する科目を専攻した期間も通算されます。
在留資格が許可される例
この資格を取得することができるのは、たとえば以下のような場合です。語学の講師を行う場合を除き、就労した職業とその外国人の学歴または経歴とが関連していることが必要となります。
母国の大学で日本語学科を卒業した外国人が、外国人の宿泊客が多数来客するホテルに雇用され、語学の知識を生かして接客を行う場合
日本の専門学校で情報工学を学んだ外国人が、システム開発会社においてシステムエンジニアとして就労する場合
語学講師として10年以上の実務経験がある外国人が、語学教室の教師として就労する場合
服飾デザイナーとして3年以上の実績がある外国人が、アパレル企業の服飾デザイナーとして就労する場合
在留資格が不許可となる例
審査に落ちてしまうケースとしては、たとえば以下のような場合が考えられます。なおこうした申請人の事情の他、就職しようとする企業の財務状況が赤字であるときなども不許可になることがあります。
学歴と職務の関連性がない場合
日本の大学で農学を専攻した外国人が、会計業務に従事するという場合のように、その外国人の学歴と職務に関連がない場合には、資格が取得できません。
日本人の社員と給与額に格差がある場合
この資格を取得する上では、その外国人の報酬が「日本人が従事する場合と同等額以上の報酬」でなければなりません。そのため同部署の日本人社員は年俸500万円であるのにその外国人は年俸300万円であるというような場合は資格が取得できません。なお必ずしも正社員でなくとも、業務委託等でも資格の取得は可能ですが、その場合も日本人の受託者と同額以上の報酬である必要があります。
過去に無許可で資格外活動をしたことなどがある場合
資格取得の要件として「素行が善良であること」という要件が定められており、たとえば留学の在留資格であるのに1週28時間を超えてアルバイトをしていたというような場合には、審査にあたってマイナスの要素として加味されます。また在留資格の更新を期限までに行わなかったことがある場合にも、同様に審査に通りにくくなる要因となります。
審査に必要な期間
申請から許可までに必要な審査期間としては、更新の場合、2週間程度、新規に取得する場合は1カ月半、別の資格からの変更の場合には、1カ月程度が見込まれます。ただし審査が集中する3月~4月など、時期によっては2ヶ月程度を必要とする場合もあり、また上場企業に就職する場合には審査が短くなる傾向がある一方、スタートアップ等への就職の場合には審査が長期化するなど、審査の内容によっても期間が前後することがあります。
取得までの流れ
技術・人文知識・国際業務ビザでの在留資格の許可を受ける場合、以下のような流れとなります。
外国人が海外にいる場合
受入企業が直接または行政書士に依頼して、出入国在留管理庁に申請を行う
出入国在留管理庁での審査(標準的な期間:2週間~一か月)
審査に合格の場合、在留資格認定証明書の交付
交付された認定証明書を外国人に送付する
外国人が本国の日本大使館、日本領事館等でVISAの発給を受ける
日本に上陸後、空港等で在留カードの交付を受ける
外国人が他の在留資格ですでに日本国内にいる場合
受入企業又は本人が直接または行政書士に依頼して、出入国在留管理庁に申請を行う
出入国在留管理庁での審査(標準的な期間:2週間~一か月)
審査に合格の場合、出入国在留管理庁で新しい在留カードの交付を受ける
変更や更新の場合、以前の在留資格が満了する日の3カ月前から申請することができ、審査が長期化した場合は、以前の在留資格が満了した日から2か月間は特例期間として以前の在留資格で滞在することができます。ただしこの期間を超えてしまった場合は、審査中でも一時帰国しなければならなくなりますので、変更や更新の申請は余裕をもって行うようにしましょう。
内定から入社までに待期期間がある場合
技術・人文知識・国際業務に該当する職業への就職について企業から内定をもらった場合においても、秋卒業で春入社の場合のように、卒業から入社までに待期期間がある場合、その待期期間も引き続き日本に在留しようとするときは、そのための在留資格に変更する必要があります。
この場合、「特定活動」という在留資格によることとなります。内定後から入社までの待期期間についての特定活動ビザに変更するには、以下の要件を満たす必要があります。
日本国内の教育機関を卒業したこと又は教育機関の課程を修了したこと
内定後1年以内であって,かつ,卒業後1年6月以内に採用されること