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景品表示法について

更新日:6月21日



 目次   

 広告の表記に対する規制 

 景品類に対する規制   

 措置命令案件      


景品表示法とは


景品表示法とは、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」と言い、広告の表示および景品の提供について規制する法律です。


景品表示法の規制

広告の表示 景品の提供


広告の表示び景品の提供は、事業者にとって商品や役務を消費者に訴求するための販促活動として重要な手段となっていますが、一方でそれらが過大であったり虚偽であったりする場合には、消費者が不測の不利益を被ってしまうおそれがあります。


景品表示法は、消費者がこのような被害を受けることを予防するため、消費者がその商品や役務について誤認するような広告表示を規制するとともに、事業者が過大な景品類を提供することによって、商品や役務の品質に基づく正常な自由競争が阻害されることがないように制限を課しています。


なお広告表記については、独占禁止法において「欺瞞的顧客勧誘」として「不公正な取引方法」に指定されており、景品表示法はその特別法として位置づけられています。


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景品表示法に違反した場合


景品表示法に違反した場合、消費者庁による措置命令の対象となります。措置命令においては、違反事実の排除や再発防止策の実施などが命じられ、その事実が公表されます。また事業者に景品表示法違反についての注意義務違反が認められる場合、さらに課徴金納付命令により売上額の3%に相当する課徴金が科されます。


景品表示法に違反 → 弁明の機会の付与 → 措置命令・課徴金納付命令


なお措置命令および課徴金納付命令が出される場合、あらかじめ事業者に対し、違反事実について弁解するための弁明の機会の付与がなされます。行政書士は、これらの弁明の代理人となることができます。仮に弁明の機会の付与を受けた場合には、専門家のアドバイスのもと適切に対処しましょう。


広告の表示に対する規制


景品表示法における広告の表示に対する規制として、有利誤認表示および優良誤認表示に対する規制があります。またこれらの誤認表示に当たりやすい広告表示の類型として、比較表示および強調表示ならびに体験談の表示があります。


有利誤認表示とは


有利誤認表示とは、商品や役務の取引条件が(1)実際よりも著しく有利であるか(2)他の事業者に比べて著しく有利であると消費者に誤認させるような表示を言います。


有利誤認表示

(1)実際の内容よりも、価格や内容が、有利であると見せかける広告

(2)競合他社よりも、価格や内容が、有利であると見せかける広告 


 具体的には、以下のような事例が有利誤認表示に当たります。

  1. 実際には常時10万円で販売している商品について、15万円で販売した実績や予定がないにもかかわらず、「いまだけ大特価10万円!」と表示するケース

  2. 実際には400gしか分量がないにもかかわらず、「内容量:500g」と偽って表示するケース

  3. 実際にはさらに○○プランに加入しない限りその特典を得ることができないにもかかわらず、「本商品購入で○○特典付与」とのみ表示するケース

  4. 裏付けとなる客観的な資料がないにもかかわらず、「業界NO.1の最安値」と表示するケース

架空の価格の表示


近年の措置命令事例においては、事例1のように、架空の取引価格を表示することにより、その取引価格が有利であると消費者に誤認させる広告に対して、措置命令が複数件出されています。完全に架空ではなく、例えば「参考価格」「通常価格」として表示した価格が、企業で内部的に商品管理に使用されていた場合であっても、その価格で販売した実績がないときは措置命令の対象となります。


優良誤認表示とは


優良誤認表示とは、商品や役務の内容が、(1)実際よりも著しく優良であるか(2)他の事業者に比べて著しく優良であると誤認させるような表示を言います。


優良誤認表示

1)実際の内容よりも、品質や規格が、優良であると見せかける広告

(2)競合他社よりも、品質や規格が、優良であると見せかける広告 


 具体的には、以下のような事例が優良誤認表示に当たります。

  1. 実際には原産国が海外であるにもかかわらず、「○○県産」と偽って表示するケース

  2. 実際には特定の名門校への受講生の進学実績が60%しかないにもかかわらず、「当予備校の○○への進学率80%」と偽って表示するケース

  3. 実際には食事療法や適度な運動を同時に行わなければ痩身効果を得ることができないにもかかわらず、「多くの人がダイエット効果を実感」とのみ表示するケース

  4. 裏付けとなる客観的な資料がないにもかかわらず、「日本で唯一」「○○でNO.1の実績」と表示するケース


瘦身効果・美容効果の表示


優良誤認表示については、健康食品やサプリ、運動器具のように痩身効果や健康効果を宣伝する商品や、エステサロンのように美容効果を宣伝する役務に関して、措置命令事例が頻発しています。これらの商品や役務の広告表示については、薬機法や医師法などの他の法令による規制についても配慮しなければなりません。


客観的な数値の表示


また「○%の除菌効果」「○%の就職率」「○%配合」のような表示や「全ての○○に完備」「○○と同等の効果」のような表示をはじめとして、特定の数値やパーセント表示あるいは客観的に計測可能な事実を広告として表示する場合には、それらの数値や事実を裏付けることができる資料を用意しておく必要があります。


比較表示とは


比較表示とは、商品や役務の内容や取引条件について、他の事業者と比較して表示する広告を言います。景品表示法は、必ずしもこのような比較表示を禁止してはいませんが、妥当な方法により比較表示をしない場合には、有利・優良誤認表示に該当する可能性があります。


 比較表示をする場合には、以下の3要件を満たしていなければなりません。

  1. 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること。

  2. 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること。

  3. 比較の方法が公正であること。

1に関しては、広告主以外の第三者による調査で実証されている場合には、客観性が認められます。2については、引用を調査の趣旨に沿って行うとともに、調査機関や調査時点、調査場所などを広告に表示することが適当とされています。


3については、効用に無関係な要素をことさらに比較するほか、一般的に無関係と考えられる対象と比較したり、長所と不可分な短所を意図的に表示しないような行為が、要件を満たさない行為となります。


強調表示と打消し表示とは



強調表示とは、「全商品30%オフ」や「業界ナンバー1」「1ヶ月で10kg減量」のように、断定的表現や目立つ表現を用いて、商品や役務の内容や取引条件を強調して表示することにより、消費者に対して訴求する広告を言います。


強調表示はそれ自体として景品表示法上の問題を生じるものではありませんが、実際は例外や制約条件があるにもかかわらず、強調表示が無条件・無制約にその商品や役務に妥当するとの誤解を消費者に与えた場合には、有利・優良誤認表示となるおそれがあります。


このように強調表示によっては、消費者が通常は予期することができないような事項がある場合には、それらの事項を表示する打消し表示を強調表示とともに行わなければなりません。景品表示法上、その広告が適切であるかどうかは、強調表示と打消し表示を一体としてみたときに、有利・優良誤認表示となっていないかどうかにより判断されます。


強調表示・打消し表示のパターン

 強調表示と打消し表示の具体例としては、パターンごとに以下のような表示が考えられます。


1.例外型


強調表示の内容に例外がある場合、打消し表示で例外を表示します。例外について、消費者がイメージできるよう、できる限り具体的に記載する必要があります。


強調表示「全商品30%オフ」←打消し表示「*一部のブランド品を除きます」


2.別条件型


強調表示の内容の商品や役務を受けるために別条件がある場合、打消し表示で別条件を表示します。複数の条件が介在する複雑な料金体系であるような場合には、消費者が理解できるように分かりやすく記述する必要があります。


強調表示「インターネット使用料無料」←打消し表示「*当会の会員に限ります」


3.追加料金型


強調表示の内容の商品や役務を受けるために追加料金が必要な場合、打消し表示で追加料金を表示します。「全て込み」など追加料金があたかも存在しないかのような強調表示をした場合、たとえ打消し表示をしていても、消費者がその内容を理解できないおそれがあります。


強調表示「入会金10,000円」←打消し表示「*別途、事務手数料3,000円がかかります」


4.試験条件型


強調表示の内容が特殊な試験環境の下での測定値である場合、打消し表示において、試験条件について消費者に理解できる表現を用いて表示します。業界用語や専門用語など専門技術的な内容である場合、消費者がその内容を理解できず、結果として強調表示が無制約に妥当するという誤認を与えるおそれがあります。

強調表示「最大通信速度2000fps」←打消し表示「*特殊な試験環境下での理論値です」


5.体験談型


強調表示の内容が個人の体験談である場合、効果には個人差があることの他、打消し表示において、その効果を得るために必要な条件や統計情報を表示します。体験談については、打消し表示があったとしても、消費者は「大体の人」が同等の効果を得られると誤認する傾向が強く、有利・優良誤認表示となるおそれがあります。そのため併用が必要な運動療法や食事療法について明記するとともに、同等の効果を得られる割合と得られない割合について、統計的な調査に基づく情報を付記することが望ましいと言えます。


強調表示「日頃服用することで痩身効果を実感しています」←打消し表示「*効果には個人差があり、適切な食事制限と運動の継続が必要です。」



強調表示・打消し表示の媒体


強調表示に対して打消し表示が適切であるかどうかは、打消し表示の内容的なパターンのみならず、それらの表示がなされる媒体によっても異なります。なお、すべての媒体に共通の事項としては以下の4点が挙げられます。

  1. 打消し表示の表記が小さすぎ、読みづらくなっていないこと

  2. 強調表示に対して打消し表示の表記が、極端に小さすぎないこと

  3. 強調表示と打消し表示の位置関係が隔たりすぎていないこと

  4. 打消し表示とその背景が、模様や色合いにより区別しづらくなっていないこと

紙媒体の場合


紙面広告においては、読者は読みたい情報を拾い読みする傾向があります。そのため強調表示と打消し表示との位置関係や配色などにより、強調表示と打消し表示を一体として認識できるかどうかが、とりわけ重要とされています。これらが一体として表記されていない場合、読者は打消し表示に気づかない可能性があります。なおチラシ、中づり広告、壁面広告など、広告と広告を見る者との距離の違いに応じて、打消し表示がそれぞれ認識可能なように表示をする必要があります。


電子媒体の場合


電子媒体においては、画面をスクロールして情報を読み取るという特性から、強調表示をした場合、打消し表示が強調表示から1スクロール以上離れることがないように配置する必要があります。とりわけスマホ上の広告の場合、コンバージョンボタンより下に打消し表示があるときは、消費者はコンバージョンボタンを先に押してしまい、打消し表示を読まないおそれがあります。またタップにより情報が現れるアコーディオンパネルを用いる際には、その情報が重要な情報であることが分かるように表示しなければなりません。


動画媒体の場合


動画媒体においては、音声情報と画像情報が同時に送信されるという特性により、打消し表示が文字のみあるいは音声のみで行われた場合、打消し表示の他に注視の対象があると、視聴者は打消し表示に気づかないおそれがあります。また視聴者は動画内の印象的な情報しか記憶しない傾向があるため、一つの動画内に複数の強調表示と打消し表示の組み合わせがあると、視聴者に正しく認識されない可能性があります。打消し表示を文字と音声で同時に行うなど、工夫が求められます。


景品類に対する規制



景品表示法では、広告表示の規制の他、商品や役務に付随して提供される景品類に対する規制が定められています。その趣旨は、過大な景品が誘因となって消費者が割高な商品を購入して不利益を被ることを防止するとともに、事業者が景品による競争に注力して商品や役務そのものの品質や価格による競争をないがしろにしてしまうことを予防することにあります。景品類に対する規制としては、景品の最高額規制と総額規制があり、「一般懸賞」「共同懸賞」「総付景品」の区分があります。


一般懸賞


クジによる抽選やコンクールの景品、パズルやクイズの正誤による景品、競技の優劣による景品などは、「一般懸賞」として規制の対象となります。


取引価額:5,000円未満 → 最高額:取引価額の20倍 総額:売上予定総額の2%

取引価額:5,000円以上 → 最高額:100,000円 総額:売上予定総額の2%


共同懸賞


商店街や一定地域の同業者など、相当数の複数の事業者により行う懸賞は「共同懸賞」として実施することが可能です。


最高額:300,000円 総額:売上予定総額の3%


総付景品


懸賞による景品ではなく、すべての商品や役務に景品を付与する場合、「総付景品」となります。


取引価額:1,000円未満 → 最高額:200円

取引価額:1,000円以上 → 最高額:取引価額の10分の2


景品類に対する規制の例外


以下の四業種については、その業態に鑑みて、景品表示法ではなく、各業界の独自の規制により規律されます。

  1. 新聞業

  2. 雑誌業

  3. 不動産業

  4. 医療用医薬品業、医療機器業及び衛生検査所業


なお、商品や役務の利用者や来店者に対して景品をひよする行為は景品表示法上の規制を受けますが、雑誌や新聞、テレビなどで郵便はがきや電子メールにより応募する抽選による懸賞は「オープン懸賞」と呼ばれ、最高額や総額に対する規制はありません。


措置命令案件


消費者庁による事業者に対する近年の措置命令案件として、以下のような事例があります。消費者にとって馴染み深い企業名の大手企業であっても、景品表示法上の措置命令の対象となることが少なくないため、注意が必要です。


「空間除菌ストラップ」に対する措置命令


販売するストラップのパッケージにおいて「二酸化塩素のパワーで ウイルス除去・除菌 」等と表示し、そのストラップを身に着けることであたかも周囲のウイルスや菌を除去できるかのような表示をしていた事例です。消費者庁により、当該表示の取りやめと再発防止策等が命じられました。


自動車の性能表示に対する措置命令


「ダイレクトステアリング」「自動再発進機能」等と称する各種の機能について、それらの機能が、あたかもその車種の自動車における標準装備であるかのような表示を、消費者向けの紹介資料において表示していた事例です。消費者庁により、当該表示の取りやめと再発防止策等が命じられました。


洗濯用品に対する措置命令


商品の包装において「除菌試験により99%以上の抑制効果が確認されています。」「部屋干しのイヤな臭いをスッキリ解消!」等と表示し、その商品を洗濯時に衣類とともに入れることで、あたかも除菌・消臭効果があるかのように表示していた事例です。不当表示の防止等を図るための管理監督や根拠資料の確認を十分に行っていたとは認められないとして、消費者庁により、およそ3,600万円の課徴金の納付が命じられました。

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