「経営・管理」ビザとは、外国人が日本に就労に伴い中長期滞在するための在留資格のひとつです。この資格により認められる在留期間は、3カ月、4カ月、6か月、1年、3年、5年のいずれかであり、通算年数の制限なく更新ができ、家族の帯同も可能です。毎年およそ2万人が経営・管理ビザの許可を受けています。
経営・管理ビザを取得する要件
経営・管理ビザの認定を受けるためには、経営または管理しようとしている事業の規模と継続性が一定の水準を満たしており、かつその事業所が日本国内に確保されていることが必要です。具体的には、以下のような基準を満たす必要があります。
事業の規模
事業の規模は、以下のいずれかに該当している必要があります。
日本国内に居住する二人以上の常勤の職員が従事していること
資本金等が500万円以上であること
上記に準ずる規模であると認められること
常勤の職員は就労ビザで在留する外国人では上記の要件に該当せず、日本人または日本人の配偶者、永住者、定住者等の活動制限のない在留資格を有する外国人でなければなりません。資本金額については、株式会社でない場合は出資の総額、個人事業の場合は、事務所の賃貸料や人件費その他の経費からなる投資の総額によることができます。
事業の継続性
既に開始されている事業に外国人が経営管理ビザでその経営・管理に参画しようとしているか、または経営・管理ビザの更新の際には、在留期間中においても事業が継続する見込みであることが必要となります。この場合、直近の事業年度で黒字決算がされているか、または直近の事業年度で債務超過であっても事業計画等により事業の継続性が見込まれているか、もしくは二期連続で赤字決算がされている場合等は、金融機関による融資など具体的な救済策が予定されているか等が考慮されます。
事業所の確保
事業を営むための事業所が日本国内に存在しているか、またはそのための物件が確保されていることが必要です。事業所の物件を所有しているか、または事業用の賃貸物件を事業主の名義で貸借していることが必要となります。
レンタルオフィスは利用できる?
月単位の更新のレンタルオフィスなど、短期間の賃貸物件等では事業所として認められません。
自宅兼事務所は利用できる?
借主が事業主と別名義である場合や、住居用の物件である場合は、原則として事業所とすることができませんが、貸主の承諾があること、看板等の標識があること、事業専用の部屋があること等の条件が満たされているときは、事務所兼自宅とすることが認められることもあります。
これから会社を設立するとき(特例措置)
経営・管理ビザによる場合
いまだ会社を設立しておらず、在留資格の認定を受けてから会社を設立する予定であるときは、設立しようとしている会社の定款等により設立に際して出資される金額を明らかにすることにより、「事業の規模」の要件を満たすことができます。また事業所の確保に関しては、賃貸を検討している物件について説明する資料(場所、広さ、予算等が明らかとなる資料)をもって「事業所の確保」の要件の確認を受けることが可能です。
このように在留資格の認定を受けてから会社を設立する場合の在留期間として「4か月」という期間が定められており、原則として更新の時までに会社の設立を完了して登記簿謄本を取得しておく必要があります。ただし在留資格の認定のときの資料との整合性等がある場合は、登記が未了の場合でも例外的に更新が認められることがあるようです。
スタートアップビザ(起業準備活動ビザ)による場合
経済産業省の認定を受けた一部の自治体においては、「起業準備活動計画」の確認を自治体から受けることで、最長一年間、日本国内において事業所の手配や資本金の確保を含む起業の準備を行うことができます。この場合、まず6ヵ月間の在留期間を許可された後、再度「起業準備活動計画」の確認を受けることでさらに6か月間の更新が可能です。
なおスタートアップビザにより許可を受けることができる事業の種類は自治体により指定されており、申請に当たってはあらかじめ起業する事業がその範囲内であるかどうかの確認が必要です。たとえば横浜市においては、下記の分野で確認を受けることができます。
IoT分野及びライフイノベーション分野
革新的技術を用いた事業
知識集約・付加価値創造型事業
その他、新産業創造を目指す事業
横浜市、京都府等、スタートアップビザを活用することができる自治体の一覧は、下記のリンクから確認することができます。
国家戦略特区で起業する場合
「外国人創業活動促進事業」を策定している国家戦略特区で起業する場合には、6ヶ月間、日本国内において事業所の手配や資本金の確保を含む起業の準備を行うことができる他、その後さらに1年間、事業所の確保について、自治体が認定したレンタルオフィスやコワーキングスペース等を利用することが認められます。
大学卒業後に起業する場合(特定活動ビザ)
日本国内の大学や大学院を卒業後に、一定の起業のための準備期間を経て起業するという場合、その準備期間中も引き続き日本に滞在するためには、まずは「留学」の在留資格から、こうした起業準備が認められる在留資格へ変更する必要があります。この場合、「特定活動」というビザが必要です。
「特定活動」へ変更するためには、卒業した大学による起業支援のための措置が取られていることの他、以下の要件を満たす必要があります。
「留学」の在留資格で日本国内の大学又は大学院に留学し、卒業又は卒業見込みであること
在学中の成績及び素行に問題がないこと
在学中から起業活動を開始しており、大学が推薦する者であること
卒業後6ヶ月以内に起業する予定であること
事業計画書が作成されていること
滞在中の一切の経費を支払う能力があること
会社の役員や幹部となるとき
外国人が取締役や部長等の役員や幹部として日本の会社の管理に参画する場合には、その会社について「事業の規模」や「事業の継続性」などの要件が満たされている必要がある他、その外国人が3年以上の事業の経営又は管理の経歴を有していることが求められます。ただし経営管理修士(MBA)など、経営管理について専攻する大学院に在学していた期間もこの期間に算入することができます。
審査に必要な期間
申請から許可までに必要な審査期間としては、更新の場合、40日程度、新規に取得する場合は80日程度、別の資格からの変更の場合にも同様に80日程度が見込まれます。経営・管理ビザは他の就労ビザと比較して取得が困難なビザであり、審査期間も長期化する傾向があります。
取得までの流れ
経営・管理ビザでの在留資格の許可を受ける場合、以下のような流れとなります。
外国人が海外にいる場合
受入企業が直接または行政書士に依頼して、出入国在留管理庁に申請を行う
出入国在留管理庁での審査(標準的な期間:2週間~一か月)
審査に合格の場合、在留資格認定証明書の交付
交付された認定証明書を外国人に送付する
外国人が本国の日本大使館、日本領事館等でVISAの発給を受ける
日本に上陸後、空港等で在留カードの交付を受ける
外国人が他の在留資格ですでに日本国内にいる場合
受入企業又は本人が直接または行政書士に依頼して、出入国在留管理庁に申請を行う
出入国在留管理庁での審査(標準的な期間:2週間~一か月)
審査に合格の場合、出入国在留管理庁で新しい在留カードの交付を受ける
変更や更新の場合、以前の在留資格が満了する日の3カ月前から申請することができ、審査が長期化した場合は、以前の在留資格が満了した日から2か月間は特例期間として以前の在留資格で滞在することができます。ただしこの期間を超えてしまった場合は、審査中でも一時帰国しなければならなくなりますので、変更や更新の申請は余裕をもって行うようにしましょう。