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英文契約とインコタームズ

更新日:7月31日




インコタームズとは


インコタームズ(Incoterms)とは、フランスに本拠を置く国際商業会議所(ICC)が制定した貿易取引条件とその解釈に関する国際規則のことを指します。貿易において、その送料の負担、保険料の負担、危険負担、通関事務の負担などを輸出者と輸入者のどちらが負担するかを取り決めるために、広くこのインコタームズが用いられています。


もちろん契約書においてインコタームズに準拠せず、国内取引で用いる通常の契約書のように、契約書や発注書にこれらの事項を直接規定することも可能ですが、インコタームズに準拠することで一括して内容を定めることができるため、考慮するべき事項の多い国際取引においてはとても利便性の高い規則となっています。


インコタームズは、数年ごとにその内容が微調整されており、直近では2020年に一部貿易条件の統廃合などがなされ、また一部の保険付保義務の内容も改められました。そのためインコタームズを使用する場合には、何年に制定されたインコタームズに準拠するかを明記することが必要です。


よく使われるインコタームズ


インコタームズには、以下のような貿易条件が定められています。


EXW、FCA、FAS、FOB、CFR、CIF、CPT、CIP、DPU、DAP、DDP


このうちFAS、FOB、CFR、CIFは、その条件の一部に港での船積み・荷卸しを含むため海上輸送に用いられ、EXW、CPT、CIP、DAP、DDPは空輸を含むあらゆる輸送手段に対して用いることができます。とりわけ英文契約においてよく使われるインコタームズとしては、以下のような貿易条件が定められています。


EXW(Ex-Works)

EXW(工場渡し)の記載方法


ExWorksは、エックスワークスと読み、「工場渡し」とも言われます。契約書に記載する場合は、例えば以下のように記載します。

The delivery of the Products from _[輸出者]_ shall be according to EXW (INCOTERMS 2020) _[輸出者]_ warehouse.

EXW(工場渡し)の内容


別名「工場渡し」とあるように、この貿易条件においては、輸出者は、工場から出荷するだけで免責され、工場からの積み込み、輸出税関事務、輸送、輸入通関事務など以降のコストとリスクは全て輸入者側が負担します。具体的には、輸出国側で何らかの貿易制限が課されていた場合、そのための申請の事務も輸入者が行わなければならず、また輸送上の事故で貨物が損傷しても輸出者には代替品の出荷などの責任は生じません。貿易条件の中では、最も輸出者に有利な定めとなります。


この条項とする場合、輸入者としては、輸出国での貿易実務に詳しい人材を確保するか、または少なくとも輸出税関事務で輸出者の十分な協力が得られることを確認しておくことが無難でしょう(貨物の仕様については輸出者のほうが詳しいことが通常と思われますので、仕様書の提出などが税関で求められた場合、こうした書類を輸出者に提供してもらう必要があります)。


DDP(Delivery Duty Paid)

DDP(関税込持込渡し)の記載方法


DDPは、「関税込持込渡し」とも呼ばれ、EXWとは逆に、輸入者に最も有利な貿易条件です。契約書に記載する場合は、例えば以下のように記載します。

The delivery of the Products from _[輸出者]_ shall be according to DDP (INCOTERMS 2020) _[納品場所]_.

DDP(関税込持込渡し)の内容


DDPにおいては、輸出者が輸入者の指定した住所までの輸送のコストとリスクをすべて負担します。そのため輸出者は送料を負担し、輸出入の通関事務を行う他、輸送上の事故で貨物が損傷した場合、輸出者がこれを補填する義務を負います。


海外から輸入する場合は、まずはこの貿易条件としてもらえないか打診してみることが重要となるでしょう。逆に海外に輸出する場合は、武器(電子機器その他の民生品も転用可能なものは該当することもあります)や医薬品、食品、おもちゃのような規制品をはじめとして、なんらかの制限措置が課されている物品については、輸入先での税関事務で問題がないかあらかじめ調査しておくことが必要です。


FOB(Frree on Board)

FOB(本船渡し)の記載方法


FOBは、「本船渡し」とも呼ばれ、海上輸送においてよく用いられる貿易条件です。契約書に記載する場合は、例えば以下のように記載します。

The delivery of the Products from _[輸出者]_ shall be according to FOB(INCOTERMS 2020) _[輸出港]_.

FOB(本船渡し)の内容


FOBにおいては、輸出者は、船積みまでのコストとリスクを負担し、輸入者は船積みからのコストとリスクを負担します。そのため輸出税関事務は輸出者が行い、輸入税関事務は輸入者が行います。また船積み以降、たとえば海難事故などで貨物が損傷した場合には、輸出者は責任を負わないため、輸入者が適切な保険を付す必要があります。


CIF(Cost Insuranse and Freight)

CIF(運賃保険料込み)の記載方法


別名「運賃保険料込み」とも呼ばれ、FOBと並んで海上輸送でよく用いられます。契約書に記載する場合は、例えば以下のように記載します。

The delivery of the Products from _[輸出者]_ shall be according to CIF(INCOTERMS 2020) _[輸入港]_.

CIF(運賃保険料込み)の内容


CIFは、輸入港に至るまでのコストを輸出者が負担する一方、輸出港での船積み以降のリスクは輸入者が負担します。具体的には、運賃と輸入者を被保険者とする海上保険の保険料については、輸出者が負担することとなります。たとえば海難事故で荷物が損傷したような場合には、リスクは輸入者が負担するため輸出者に代替品の出荷などの責任は生じませんが、そのかわり輸入者は、輸出者が付保した保険から保険金を得ることができます。なお輸入通関事務は、輸入者がこれを行います。


なおCIFにより輸入する場合の注意点としては、輸出者が付保するべき保険としては、協会貨物約款に定めるところのICC(C)で足りるとされており、最小限の海上保険の付保義務しか負担しないため、もしICC(B)やICC(A)などのより包括的な保険条件で海上保険を付保してほしい場合は、別途輸出者と明示的にその旨を合意しておく必要があります。


インコタームズと関税



なお日本に物品を輸入する場合の関税価格は、課税標準の「加算要素」として、「輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃、保険料その他運送に関する費用」が挙げられていることから、原則としてCIF価格により課税されることとなっています。


1403 原則的な課税価格の決定方法(カスタムスアンサー)

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