ホテル・旅館などの宿泊業において外国人スタッフを採用する場合、そのスタッフが保有している在留資格により、従事させることができる業務内容や労働時間の総量などが異なります。
就労ビザの場合は、「特定技能ビザ」「技能ビザ」「技術・人文知識・国際業務ビザ」「特定活動告示第46号」などが宿泊業のスタッフとして就労することができるビザに当たります。就労ビザ以外においては、「永住者ビザ」「配偶者ビザ」などの場合、スタッフとして働くに当たり、労働時間や業務内容に関して特別な就労制限は課せられていません。これに対し、「留学ビザ」「家族滞在ビザ」などのビザの場合には、資格外活動として就労することになりますので、原則として週当たり26時間を超えて労働させることができないため、短時間のパートやアルバイト等として採用する必要があります。
宿泊業に該当する就労ビザ一覧
就労ビザは、日本国内で一定の職業に就くことを目的とする在留資格であり、そのビザの保有者が従事することができる業務内容は、それぞれのビザによりあらかじめ決められています。宿泊業での業務内容と、その業務内容により許可を受けることができる就労ビザの対応関係は、下記のようになります。
ポジション | 業務内容 | 該当するビザ |
接客 | 接客、フロント、レストランサービス、企画・広報等の宿泊サービスの提供 | |
接客 | 複数のスタッフの指導を含む、接客、フロント、レストランサービス、企画・広報等の宿泊サービスの提供 | |
接客 | 送迎、接客、会場設営、料理・飲料の提供、安全確保・衛生管理等を含む業務 | 技能実習(宿泊) |
通訳・接客 | 外国人宿泊客への通訳を兼ねた接客又は技能実習生等への通訳を兼ねた指導等を含む、接客、フロント、レストランサービス、企画・広報等の宿泊サービスの提供 | |
厨房、レストラン | 外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理) | |
厨房、レストラン | 複数のスタッフの指導及び店舗管理の補助を含む、飲食物調理、接客、店舗管理等の業務 | |
厨房、レストラン | 中国料理、フランス料理、インド料理をはじめとするエスニック料理等の調理師の他、点心、パン、デザート当の食品を製造する調理師やパティシエ、ワインソムリエ等 | |
事務 | 会計、人事、総務やマーケティング・企画、ITなど、専門知識を必要とする業務 | |
事務 | 海外取引業務、商品開発業務 |
以上のように、フロントなど宿泊客向けの接客業務等については、特定技能(宿泊)・技能実習(宿泊)、観光客等への通訳を含む業務については、特定活動告示第46号、レストランにおける厨房や接客業務については、特定技能(外食)、バックオフィスでの業務については、技術・人文知識・国際業務等を検討することとなります。
なおそれぞれのビザにおいてその外国人が満たすべき職歴・学歴は以下の通りです。
上記の他、報酬額が日本人と同等以上であることや、技能実習ビザについては技能実習計画の認定を受けること等、それぞれのビザに応じて、スタッフと受入企業の双方で固有の要件が課せられていますので、これらを満たすことができるかどうかを確認しておく必要があります。
*それぞれのビザの詳細については、表中のリンクからも確認することができます。
就労制限のないビザ
就労を目的とするビザの他、特別な就労制限のないビザを保有している外国人をスタッフとして採用することも考えられます。配偶者ビザ、永住者ビザ、定住者ビザを保有している場合がこのケースに該当します。
資格外活動による場合
典型的には、留学生をアルバイト等として採用する場合など、資格外活動に基づいて外国人スタッフを採用することも考えられます。この場合、在留カードに資格外活動許可の内容が記載されていますので、職種や就労時間の制限に違反していないかどうか確認することが必要となります。一般的には、週当たり26時間までの就労が認められています。
取得までの流れ
外国人スタッフの在留資格の許可を受ける場合、以下のような流れとなります。
外国人が海外にいる場合
受入企業が直接または行政書士に依頼して、出入国在留管理庁に申請を行う
出入国在留管理庁での審査(標準的な期間:2週間~一か月)
審査に合格の場合、在留資格認定証明書の交付
交付された認定証明書を外国人に送付する
外国人が本国の日本大使館、日本領事館等でVISAの発給を受ける
日本に上陸後、空港等で在留カードの交付を受ける
外国人が他の在留資格ですでに日本国内にいる場合
受入企業又は本人が直接または行政書士に依頼して、出入国在留管理庁に申請を行う
出入国在留管理庁での審査(標準的な期間:2週間~一か月)
審査に合格の場合、出入国在留管理庁で新しい在留カードの交付を受ける
変更や更新の場合、以前の在留資格が満了する日の3カ月前から申請することができ、審査が長期化した場合は、以前の在留資格が満了した日から2か月間は特例期間として以前の在留資格で滞在することができます。ただしこの期間を超えてしまった場合は、審査中でも一時帰国しなければならなくなりますので、変更や更新の申請は余裕をもって行うようにしましょう。