「特定技能」ビザとは、外国人が日本で就労して中長期滞在するための在留資格のひとつです。「特定技能1号」および「特定技能2号」の二種類があります。特定技能ビザにより認められる在留期間は、特定技能1号の場合、1年以内の法務大臣が指定する期間、特定技能2号の場合、6カ月、1年、3年のいずれかです。特定技能1号の場合、通算年数は最大で5年となり、家族の帯同は原則としてできません。特定技能2号の場合、家族の帯同が可能です。
特定技能に該当する職業
特定技能ビザは、日本国内において労働力が不足している産業分野に外国人が就労するための在留資格であるという性格上、このビザの認定を受けることができる産業分野とそれぞれの分野において就労することができる業務があらかじめ定められています。特定技能ビザに該当する産業分野は、下記の16の産業分野になります。
産業分野 | 業務 |
介護 | ・身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等) (注)訪問系サービスは対象外 |
ビルクリーニング | ・建築物内部の清掃 |
素形材・産業機 械・電気電子情報 関連製造業 | ・機械金属加工 ・電気電子機器組立て ・金属表面処理 |
建設 | ・土木 ・建築 ・ライフライン・設備 |
造船・舶用工業 | ・溶接 ・塗装 ・鉄工 ・仕上げ ・機械加工 ・電気機器組立て |
自動車整備 | ・自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随 |
航空 | ・空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等) ・航空機整備(機体、装備品等の整備業務等) |
宿泊 | ・宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊 サービスの提供 |
農業 | ・耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等) ・畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等) |
漁業 | ・漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植 物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等) ・養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動 植物の収獲(穫)・処理、安全衛生の確保等) |
飲食料品製造業 | ・飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生) |
外食業 | ・外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理) |
自動車運送業 | ・バス運転者、タクシー運転者、 トラック運転者 |
鉄道 | ・運輸係員(運転士、車掌、駅係員)、 軌道整備、電気設備整備、車両製造、 車両整備 |
林業 | ・育林、素材生産、林業種苗育成等 |
木材産業 | ・製材業、合板製造業などに係る木材の 加工工程及びその附帯作業等 |
上記の産業分野は特定技能1号と2号で共通ですが、介護分野に関しては、特定技能2号の在留資格はなく、「介護」という別の在留資格によることとなります。
特定技能に必要な試験の合格要件
特定技能の認定を受ける上では、特定技能1号の場合、その外国人が日本語能力試験と技能試験に合格している必要があり、特定技能2号の場合、その外国人が技能試験に合格している必要があります。日本語能力試験としては、「国際交流基金日本語基礎テスト」および「日本語能力試験」が指定されています。特定技能1号においては、日本語能力試験のN4(基本的な日本語が理解できるレベル)相当の日本語能力が必要です。技能試験については、それぞれの産業分野を管轄する省庁による技能評価試験に合格している必要があります。
各種試験の概要は下記の各省庁等のリンクから確認することができます。
国際交流基金日本語基礎テスト
日本語能力試験
介護日本語能力試験
産業分野 | 業務 |
介護 | |
ビルクリーニング | |
素形材・産業機 械・電気電子情報 関連製造業 | |
建設 | |
造船・舶用工業 | |
自動車整備 | |
航空 | |
宿泊 | |
農業 | |
漁業 | |
飲食料品製造業 | |
外食業 |
技能実習からの移行
特定技能1号については、「技能実習」から在留資格を移行することができます。この場合、技能実習での職種・作業内容と特定技能の認定を受ける産業分野・業務内容に関連性があることが必要となります。技能実習は、技能実習2号を良好に修了している必要があります。移行が可能な場合には、日本語能力試験と技能試験の合格要件が免除されます。
外国人への支援
特定技能1号の外国人を受け入れる場合、その受入企業は、その外国人に対して各種の支援を行う義務を負います。このビザの認定を受けるにあたっても、支援計画の内容が審査の項目となります。支援の内容は、①事前ガイダンス、②出入国の際の送迎、③住居確保や生活に必要な契約の支援、④生活オリエンテーション、⑤公的手続き等への同行、⑥日本語学習の機会の提供、⑦相談・苦情への対応、⑧日本人との交流促進、⑨転職支援、⑩定期的な面談、の10項目となります。こうした支援は、受入企業が自ら行うか、又は登録支援機関に委託することができます。
審査に必要な期間
申請から許可までに必要な審査期間としては、更新の場合、40日程度、新規に取得する場合は2カ月程度、別の資格からの変更の場合にも、2カ月程度が見込まれます。特定技能2号の場合には、いずれの場合も50日程度の審査期間が見込まれます。
取得までの流れ
特定技能の在留資格の許可を受ける場合、以下のような流れとなります。
外国人が海外にいる場合
受入企業が直接または行政書士に依頼して、出入国在留管理庁に申請を行う
出入国在留管理庁での審査(標準的な期間:2週間~一か月)
審査に合格の場合、在留資格認定証明書の交付
交付された認定証明書を外国人に送付する
外国人が本国の日本大使館、日本領事館等でVISAの発給を受ける
日本に上陸後、空港等で在留カードの交付を受ける
外国人が他の在留資格ですでに日本国内にいる場合
受入企業又は本人が直接または行政書士に依頼して、出入国在留管理庁に申請を行う
出入国在留管理庁での審査(標準的な期間:2週間~一か月)
審査に合格の場合、出入国在留管理庁で新しい在留カードの交付を受ける
変更や更新の場合、以前の在留資格が満了する日の3カ月前から申請することができ、審査が長期化した場合は、以前の在留資格が満了した日から2か月間は特例期間として以前の在留資格で滞在することができます。ただしこの期間を超えてしまった場合は、審査中でも一時帰国しなければならなくなりますので、変更や更新の申請は余裕をもって行うようにしましょう。